モンテッソーリとは


マリア・モンテッソーリ博士は、イタリア女性として初の医学博士でした。医者としての初期のキャリアの中で発達障害児の教育に携わることになった彼女は、独自の教育プログラムによって彼らの発達が大きく進むのを確認しました。その後、両親が働いている間の未就学児の居場所を求められたことをきっかけに、1907年、イタリアのスラム街で最初の子どもの家(Casa dei Bambini)ができました。そこでの経験をもとに、小さな子どもを対象とした教育方法を確立し、以来、彼女はモンテッソーリ教師の育成に尽力しつづけました。その結果、現在では世界中の子どもたちがモンテッソーリの考え方に則った教育を受けられるようになり、対象とする年齢層も広がって、0歳児の保育から大学教育にまで渡っています。

 

日本では現在、おもに就学前の幼児教育でモンテッソーリの考え方が積極的に取り入れられています。

 

子どもたちによる活動


モンテッソーリの教育法は、1人ひとりの達成度や興味に応じて、個人活動や小グループの活動の形で進めていくものです。そのため、教師はいつもそのお子さまにあった難易度の活動を計画的にタイミングよく提供していきます。モンテッソーリのお仕事の特徴は、具体的であること(具体的に五感で感じながら道具を操作して習得できるように用意されていること)、興味点をはっきりと示すこと、子どもの自由選択でいつでも何度でも好きな時に練習できる環境が整えられていることなどです。自分で考えてものごとを進められる力を伸ばすように考え抜かれた教育方法です。

日常生活の仕事

2歳半で入園した場合、最初に出会う活動は「日常生活のお仕事」です。子どもの家では、お掃除やお洗濯のお仕事、花や野菜の世話、お弁当やおやつの支度などを準備しています。子どもに合った大きさで、おもちゃではない本物の機能を持った道具を揃え、無駄な失敗をさせないための決まったやり方を示すところまでが大人の役目。あとは、子どもがしたいときに自由に働けるよう、彼らの主体的な活動を見守ります。日常生活のお仕事は目的がはっきりしている点や、さまざまな実際的な道具を使うところが小さな子どもの興味をそそります。手や指や体のバランスの使い方が自然に身に付くとともに、子どもの中に責任感や秩序感も生まれます。

感覚

日常生活のお仕事を通して、ものを思い通りに扱う手ができてくると、感覚のお仕事をご紹介します。大きい-小さい、重い-軽い、長い-短い、音が大きい-小さいなど、五感を用いた少しの差異に敏感に注意を向ける練習です。これらの練習は、世界を感じて比較する参照点を作る具体的な練習となります。形や空間、漸次性を認知したり操作したりする数学的な思考の基礎も作ります。

言語

2歳半から6歳ごろまでは、飛躍的に言語が発達する時期です。初めは話し言葉を正確にやりとりできるように助け、絵本の読み聞かせや絵カードなどで語彙を増やし、そのうち、自分の考えを文字や文章で表現すること、そして、他者の考えを文字や文章で読み取ることの楽しさを覚えます。

日常生活と感覚のお仕事を繰り返しやってきた手や目は、注意を研ぎ澄まして集中できるようになってきます。ものを正確に把握したり数学的に考えたりする力も育ってきます。そのときを見極めて、数のお仕事を紹介します。10までの数を扱えるようになると、1、10、100、1000の4桁までの量を操作して足し算から割り算までの四則演算を感覚的につかむ練習が始まります。